レジリエンスの5STEP

「レジリエンス(Resilience)」とは、困難やストレスに直面したときに、バネのように心のしなやかさをもって立ち直る力、または回復力を指します。近年、このレジリエンスは「問題が起きてからの対応」ではなく、「問題を未然に防ぐための力」として注目されています。

特に小学校段階から、このレジリエンス教育への意識が全国的に高まりつつあります。背景には、いじめ、不登校、情緒面の不安定さといった課題に対し、事後的な対応だけでは十分ではなく、子ども自身が「自分の心を回復させる力」を身につけることの重要性が広く認識されてきたことがあります。

レジリエンスは特別な人だけが持つ力ではありません。
呼吸・笑顔・言葉といったごく日常的な習慣の積み重ねや、安心できる人とのつながり、自分の軸を持つことによって、誰でも育むことが可能です。こうした予防的な支援の拡充は、教育現場におけるメンタルヘルス対応の大きな流れの一つとなっています。

これからの学校教育では、子どもたちが「困難をゼロにする」「困難から目を背ける」ことではなく、「困難に向き合える力を育てる」ことが鍵となるでしょう。レジリエンスの育成は、「困難を乗り越えられるしなやかな心作り」の基盤をつくるアプローチです。

① 自分軸

「何をするか」よりも、「どうありたいか」という自分の軸をもつこと。レジリエンスの土台になるのは「共同体の中で成熟した価値観」や「こうありたい」という感覚。つらい出来事や環境に左右されず、自分のペースで戻っていく力が強まる。

「自分が大切にしたいこと」を言語化しておくことで、困難に直面したときもブレない心の柱になる。

例:
・「家族を大切にしたい」
・「自分に正直でありたい」
・「友だちを思いやる人でいたい」

② 呼吸の習慣

いちばん身近に「心を整える」セルフケア。

呼吸は自律神経に直接働きかけ、不安や緊張を緩和する効果が科学的にも確認されています。呼吸を“意識的に整える”習慣をもつことで、心の状態をセルフマネジメントできるようになる。

深呼吸の中でも、「4-7-8呼吸法」などは腹式呼吸が促され横隔膜の動きで内臓をマッサージできる。気持ちの落ち着き、記憶力向上など効果抜群。小学生でも取り組みやすいテクニックです。

 例:
・4秒吸って → 7秒止めて → 8秒吐く
・「鼻から吸って口からふ〜〜」でリラックス

③ 笑いの習慣

「笑い」は、心の回復力(レジリエンス)を高めるうえで最もシンプルで効果的な行動の一つです。心理学の分野では「感情フィードバック説」と呼ばれる理論があり、実際に楽しい気分でなくても“笑顔をつくる”だけで、脳がポジティブな神経活動を起こすことが分かっています。

 笑いには、ストレスホルモン(コルチゾール)を下げる作用や、免疫機能を高める生理的効果があります。また、気持ちを軽くし、他者とのコミュニケーションを促す力もあります。

 作り笑いであっても、「ちょっと口角を上げる」だけで脳はその表情を“笑顔”として認識し、心の状態が自然と緩んでいきます。このような“笑いの習慣”は、特別な時間や道具がなくても誰でもすぐに実践できる、強力なレジリエンス行動の一つです。

例:
・朝のあいさつで笑顔を意識する
・友だちと冗談を言い合う
・好きな動画を見て笑う

④ 言葉の習慣

ポジティブな「言葉」が思考と行動を支える。「ありがとう」「だいじょうぶ」「なんとかなる」などの肯定的な言葉は、脳のストレス反応を和らげます。このような言葉を意識的に使うことで、自己肯定感・対人関係・レジリエンス力が上がることが知られています。

「感謝の気持ちを伝える」「ほめ言葉」などは自分にも他者にも有効と言えますね。

 例:
・「できた!」「うれしい!」「ありがとう」
・「いいところ見つけゲーム」
・“励ましカード”の活用

⑤ 行動の習慣

レジリエンスは「実践」で育つ。

呼吸・笑い・言葉を日常のちょっとした行動に取り入れるだけでも効果があります。

習慣になることで、自然と回復力が高まる。

「小さな一歩」でOK。

例:
・疲れたときは深呼吸する
・つらいときも笑顔を意識してみる
・ポジティブな言葉を声に出す
・1日1回、自分をねぎらう

できるところから実践してみてはいかがでしょうか。

レジリエンスを育てる「4つの力」

レジリエンスは、特別な才能ではなく、誰もが育てることのできる心の力です。今回は、その中核となる4つの力をご紹介します。

① 打ち克つ力(チャレンジする勇気)

「やってみよう!」と一歩ふみ出す力です。
失敗するかもしれないけれど、挑戦しようとする気持ちが、心のしなやかさを育てます。たとえば、初めてのことにチャレンジする場面で必要になる力です。

② 乗り切る力(あきらめずに続ける力)

苦手なことや大変なことでも、すぐに投げ出さず、コツコツ続ける力です。
たとえば、毎日の漢字練習やピアノの練習、サッカーの練習もこの力のひとつです。

③ 立ち直る力(回復する力)

失敗したとき、落ちこんだときに、少しずつ元気を取り戻す力です。
誰にでも落ち込む瞬間はあります。でも、気持ちを立て直した経験もきっとあるはずです。この「回復する力」は、レジリエンスの大切な柱です。

④ 働きかける力(助けを求める力)

困ったときに「助けて」と言える力です。
友だちや先生、家族に相談することで、自分を支える関係が広がっていきます。レジリエンスとは、自分だけでがんばることではなく、「支え合いの力」でもあるのです。

これらの4つの力は、生まれ持った性質ではなく、日常の中で少しずつ練習して育てることができます
たとえ今は苦手でも、誰もが伸ばすことのできる力です。

レジリエンスを育てることは、子どもたちが未来をより自分らしく、しなやかに生き抜くための「心の土台」になるのです。

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